日常ではあまり使わない美しい言葉たちをあつめました。

若水わかみず
元旦の寅の刻(現在の午前4時頃の前後2時間頃)に初めて汲む水のことで、年男や一家の長が恵方(福をよぶ方角)を拝んで汲みあげます。誰にも会わないような早朝にできるだけ遠いところに汲みにいくのが重要で、汲み終わるまでは口を開いてはならず、誰かと会っても喋ってはいけません。若水は、前の年を過ごしてまとった1年の邪気を除くといわれ、地域により女性は触れてはいけないところもありますし、妻がその神聖な若水を使ってお雑煮や福茶をつくる地域もあります。

初茜はつあかね
元旦の朝の茜空のことをいいます。
まだ薄暗い野山に太陽がのぼり、だんだんと東の空が茜色に染まっていく様子は、日の出より先に元旦の訪れを告げるようです。年神様はこの初日の出とともにやってくると考えられ、初日に手を合わせて1年間の安寧を祈りました。

初笑はつわら
その年初めての笑いのことです。「笑う門には福きたる」という言葉どおり、これからの一年が笑いに満ちた幸多い一年でありますようにという願いが込められています。新年はおおいに笑いましょう!

慶雲けいうん
太陽の近くをとおりがかった雲が日の光により緑や赤に彩られる現象で、おめでたいことが起きる前兆である考えられています。それにあやかり、茶席に集う人々にもおめでたいことが起きますようにと、銘に願いを込めて使われます。

よめきみ
お正月の三が日限定で、実はネズミのことを「嫁が君」といいます。ネズミは人の近くで生活しており食害などで嫌われる一方、大黒様の使いとされています。三が日の間は「ネズミ」という言葉を忌んで、ネズミは「夜目」がきくことから「嫁」と呼ばれるようになりました。お正月には「ネズミの年取り」として少量のお米やお餅を供える地方もあります。

福寿草ふくじゅそう
新春を祝う黄色い花で別名を元日草といい、春に咲き、夏には枯れて地下に潜って育ちます。1月1日の誕生花であり、祝福・永久の幸福という花言葉をもちます。野生種は通常3月頃に咲きますが、名前のめでたさからお正月に合わせて栽培されるようになりました。

神楽かぐら
古代より続く、神座に神様をお迎えし長命を祈願する神事芸能。神様を祀るために奏でる歌や舞のことを神楽といいます。宮中に伝わる御神楽と全国各地に伝わる里神楽とがあります。

長生殿ちょうせいでん
唐の太宗が驪山(りざん)に建てた離宮のことです。中国を繁栄へと導いた玄宗が、政治にも軍事にも身が入らなくなる程夢中になった楊貴妃とともに愛を語り合った場所として知られています。長寿の意味があります。

鶴寿かくじゅ
「鶴は千年、亀は万年」ということわざからもわかるように、鶴は長寿とされることから長寿・長生きのことをいいます。また、鶴の一声はあたりに鋭く響きわたることから、権力者の一声を「鶴の一声」とも言います。

千年翠せんねんのみどり
足早に移りゆく世の中で、松の葉だけは永きにわたり季節にも左右されず常に美しい緑を保つことから、翻って不変を称え、長寿や変わらぬ健康を祈って使われる言葉になりました。一方、人の目にはわからない変化を着実に繰り返しているからこそ、美しさを永らえているのだという逆説的な意味があるともいわれています。